【アンティーク入門:vol.14】英国アンティーク家具の愉しみ方①

軽井沢・塩沢にあるアンティークショップ ベルリネッタ軽井沢です。

 

店舗は冬季休業期間中ですが、オンラインショップでは引き続きお買い物を楽しんでいただけますのでぜひチェックしてみてくださいね。

 

 

現在、4月21日(木)のオープン再開に向けて着々と新商品が入荷中です。

早く見ていただきたい気持ちでいっぱいですが、雪解けの季節まであともう少しお待ちくださいませ。

 

当ブログでは、皆さまにアンティークのお買い物をさらに楽しんでいただくため【アンティーク入門】と題した豆知識を発信しています。

 

前回まではアンティークフランス家具の歴史について詳しく見ていきましたが、今回はマナーハウス(中世のイギリスの荘園領主の邸宅をのこと)の室内装飾とともに長い歴史の中で発展してきた英国アンティーク家具について紐解いていきます。

 

 

軽井沢 アンティークショップ オールドバカラ 家具イギリス

英国アンティーク家具の歴史①

I-11世紀〜12世紀 ノルマン建築のはじまり〜ゴシック様式

1066年 ウィリアム征服王のノルマン王朝が成立する以前、アングロ・サクソン時代の英国は、北欧ヴァイキングの影響を色濃く受けていました。家具に関しても他のヨーロッパ諸国と比較してやや洗練さに欠け、民族・民芸的な北欧の重厚さが反映された意匠でした。

 

具体例としてはヴァイキング・チェアーが挙げられます。北欧様式の椅子に、主に教会建築・彫刻・絵画の分野において西ヨーロッパで広がったロマネスク様式(垂直と水平の意匠的なアクセントを持つ)が施されています。

 

英国においては、ウィリアム征服王によるノルマン・コンクェストを境として、ロマネスク様式→ノルマン建築として独自の性格と特色を持つようになりました。ダラム大聖堂やイーリ大聖堂などはノルマン建築(英国ロマネスク様式)の代表例であり、簡素・剛健・強固な印象を与える歯形装飾やジグザグなど繰り形が特徴的です。

 

このノルマン様式は家具意匠にも反映され、家具の脚や椅子の背に石造りの柱やアーチ形が用いられていたりします。組み紐模様やデフォルメされた怪獣や竜の意匠が使われることもありました。

 

この時代は、戦乱など不測の事態が起きた際に大切なものをしまって家具ごと移動させられるコッファ(部屋で使うベンチの役割)やチェストが重要視されていて、腰掛け・テーブル、時にはベッドとして使用されることもあったそうです。

 

 

12世紀半ば、1137年から7年の歳月を要したフランス・パリ近郊のサンドニ修道院・教会堂改修工事に端を発するゴシック様式が瞬く間に西ヨーロッパを席巻します。英国も例外ではなく、建築と同様に家具においても、垂直性を強調したデザイン、特に椅子などの背板は垂直性とともに高さを伴い、上部に尖塔アーチなどの意匠が取り入れられていました。アラベスク模様、唐草模様、フランボワイヤン(火炎のような波形の曲線)、トレーサリー(円や長円の弧を描く)などもこの時代の特徴的な装飾です。

 

I-16世紀〜17世紀 「オークの時代」(チューダー様式)

英国アンティーク家具の歴史は、使用される木材の種類によって分類されるのが一般的です。

 

■オークの時代(1500-1660)

■ウォルナットの時代(1660-1720)

■マホガニーの時代(1720-1770)

■サテンウッドの時代(1770-1830)

 

と大まかに4時代に分けられるのですが、まずはオークの時代に生まれた3つの様式について、詳しく見ていきたいと思います。

  

I--チューダー様式

 

 

ヘンリー8世(1509-1547)からエリザベス1世(1558-1603)統治下の家具意匠はチューダー様式と称されていま

 

この時代、まだ生活に密着した家具はほとんど存在せず、ベッド(寝台)と先述のコッファ、それからチェストくらいのバリエーションしかありませんでした。

「ポインテッドアーチ」と呼ばれる先が尖ったアーチ形や、円形モチーフの「メダリオンヘッド」、布がおられたようなデザインの「リネンフォールド」に、チューダー家の紋章をモチーフにした「チューダーローズ」の浅浮き彫りが施されている家具が、チューダー様式の家具の代表的な例です。

 

また、食卓テーブルなどは非常に簡素で、台脚に長い板を置いただけのものでした。冬になると部屋の真ん中で火を焚いて暖をとっていたので、ダイニングテーブルは壁に沿って置かれるのが一般的。そのため当時の椅子には背もたれがなくスツールやベンチに座って壁を背もたれにして座っていました。

 

ただしマナーハウスの主人だけは背もたれ付きの椅子を使っていたことから『チェアマン(組織のトップを意味する)』という言葉が生まれたと言われています。

 

I--ルネサンス様式

 

エリザベス1世統治下、イタリア発祥のルネサンスが英国建築・家具にも影響を及ぼしていきます。

 

大きな変化としては、これまでは部屋の真ん中にあった暖炉が壁側に移され、それにともなって今度は部屋の中心に食卓が据えられるようになりました。その結果、ダイニングセットが重要性の高い家具として認識されるようになります。

 

球根型の意匠を持つ独自の脚で飾られるようになり、強度と安定を図るためのストレッチャーが備わり、象嵌などの細工を施した飾りがつけられました。また椅子も背もたれのあるダイニングチェアーが主流となっていきました。

 

さらに新たに加わった家具として忘れてはならないのが、展示や収納を兼ねた戸棚形式の家具・カップボードです。まだガラス扉などは使われず、装飾された扉によって中の見えない仕様がこの時代のカップボードの特徴です。

 

I--ジャコビアン様式

 

ジェームス1世統治下では、ジャコビアン様式へと移ります。当時の社会の成熟とヨーロッパ大陸諸国からの影響により装飾性が一段と進みました。

ねじあげたロープのような螺旋形の意匠「バーレイシュガー・ターン」やろくろで糸を巻き取ったようなボビン形の意匠「ボビン・ターン」、ボール状につながった形状の意匠「ボール・ターン」など優れたデザインが多く生まれました。

 

 

 

またスライドする引き出し付きの家具、伸び縮みするリーフ・テーブルなど機能的な仕掛けも備えるようになりました。

 

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このあとチャールズ1世(1625-1649)の時代になると、次第に輸入材であるウォルナットが目立ち始め、オークの時代からウォルナットの時代へと移り変わっていきます。

 

これはチャールズ1世が持ち前の教養と知性を発揮し幅広い趣味嗜好を美術工芸・装飾意匠に求めたこと、またフランス王アンリ4世の末娘、アンリエッタ・マリアを王妃に迎え、フランスの影響も多分に受けたことが理由として挙げられます。

 

またスペインや南フランスから輸入したウォルナットを磨き込むと、オーク材よりも木目の詰まった深みのある艶がもたらされ、また加工の作業世に優れていました。そうしてウォルナットが種々の家具で使用されるようになっていったのです。

 

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