【アンティーク入門Vol.20】アール・ヌーボー期の芸術作品ーーガラスエッチング技法

 

 

軽井沢のアンティークショップ ベルリネッタ軽井沢です。

 

※お知らせ

当店は2022年11月29日(火)の営業をもって冬季休業に入らせていただきました。

来春の営業開始は4月14日(金)を予定しております。

 

当ブログは冬季休業中も月1〜2回のペースで更新し、アンティークの豆知識を綴って参りますので、ぜひお時間のある時にチェックしていただけたら嬉しいです。

 

さて、今回のブログは......【アンティーク入門Vol.20】ガラスエッチング技法とその歴史について、です。

ガラス装飾の歴史

 

ガラスがいつ頃から作られているのか......その歴史は、紀元前25世紀にまで遡ります。

古代オリエント地方、メソポタミア(チグリス川、ユーフラテス川流域から地中海東海岸に至る場所)を発祥とみる説が有力で、紀元前15世紀頃にはアフリカ大陸(エジプト)でもガラスのびん容器が製造されていたと言われています。

 

その後、紀元前1世紀になると、古代シリアで吹きガラスの技法が発明されました。

細い鉄パイプの先に溶けたガラスを付けて息を吹き込み膨らませる方法で、これは現在でも使われている技法です。この方法によってガラス容器が簡単に製造できるようになると、それまで貴重品とされていたガラスが広く一般の人々の手にもわたるようになりました。

 

ガラスは色々な方法で装飾が可能です。

 

製造過程で着色したり不透明にしたり、あるいは製造過程でまだ固まらないうちに型を使って模様を付ける・色ガラスを被せる・金属や色ガラスを挟み込む・泡を入れる・急激に冷やして表面に細かいひび割れを入れる・細い糸状のガラスを巻き付ける・出っ張りをつける・削って装飾する....etc

 

特に削って装飾する技法はバリエーションが豊富で、切子であれば、冷えて固くなってからガラス表面を直線的な切り込みの組み合わせで装飾します。他にもダイヤモンドポイントで削るギヤマン彫や、繊細な砂を高圧力で吹き付けて削るサンドブラストも有名です。

 

アールヌーボーとガラスエッチング

 

 

19世紀になると、アール・ヌーボーを代表するガラス工芸家、陶器・家具デザイナーであるエミール・ガレやドーム兄弟が、ガラスエッチングによる技法を取り入れ、ガラス装飾を芸術の領域にまで高めました。

 

 

ガラスエッチングとは、ガラスの表面に型紙などで保護部分を作り、それ以外の部分を硫酸などの薬品を用いて腐食させることによって装飾する技法です。劇薬を使用するため廃液処理施設を備える必要があるなど非常に大掛かり。高価であるのも納得ですね。

 

フッ酸(フッ化水素酸と硫酸の混合液)を使用するのが通常ですが、近年では危険薬品の使用を避けるため専用のエッチングクリームを用いたり、あるいは先述のサンドブラストによって削り装飾を施したものも含めてガラスエッチングと呼称しています。

 

サンドブラストは元々、1870年にアメリカで船舶用の錆落としのために考案された技法でした。20世紀に入ってガラス加工にも使用されるようになり、広く普及するようになりました。

 

ガラスエッチングは、平面のガラスに奥行きを作り立体的な表現を可能とし、幾何学模様から名画まで非常に繊細な表現が可能。ガラスの質感や透明感がエッチングによりさらに輝きを増し、光線を受けて模様が浮かび上がる様は思わず見入ってしまう美しさです。

 

ガラスエッチングのアンティーク扉

 

当店でもいくつかお取り扱いがありますが、ガラスエッチングの魅力を存分に楽しむことができるのは、やはりアンティーク扉です。ヨーロッパの古い建物には、繊細で美しい模様の施された大きな扉が備え付けられていますよね。

 

日本の家屋では玄関ドアとして使用するにはなかなか難しい点もありますが、たとえばリビングへと続く室内ドアや自然光を取り入れる飾り扉として使用すると、格別の優雅さが漂ってとても素敵です。

 

上写真のガラスエッチングは、当店エントランスに飾り扉として嵌め込んであるもの。ロココ様式の花模様がロマンティックで、自然光を通した際の上品な輝きはじっと立ち止まって見つめたくなります。

 

現在は冬季休業中ですが、春に再びオープンしましたらぜひ実物をご覧ください。

 

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